ミッドサマー Midsommar 燦々と輝く狂気

 

 

ミッドサマー(Midsommar)を観ました。

 

コロナ自粛明けて三回目の映画館ですが、もう映画館の大音量に対する免疫が完全に復活したことを確信しました。

 

Midsommar” est un film qui vous entraîne dans les vues grotesques qui se déroulent sous le ciel bleu vibrant.

 

Midsommar” is a movie that draws you into the grotesque sights that unfold under the vibrant blue sky.

 



 

この映画、グロいと評判だったのですが、まず上映時間がグロいです(笑)

ディレクターズカット版だったので3時間くらいでした。

 

 

夜観たので終わるのがちょっと遅くなりすぎないか心配になりながら観ました。

映画館に人が少ないわりに密閉感を感じたのでまずその雰囲気から怖かったのですが、映画が始まってからすぐ、効果音、カメラワークに独特の気味の悪さを感じました。

スウェーデン語の歌に合わせて今にも何か不吉なことが起こりそうな不穏な雰囲気がエクソシストのオープニングに似ている印象も受けました。

 

アメリカのカップルが北欧の友人に誘われてスウェーデンに飛ぶのですが、山に囲まれた大草原に到着し、ドラッグを吸い、グロッキーになっていくあたりから見ているだけで不安になるようなシーンがどんどん続いていきます。

北欧の白夜って怖いです。

夜の9時半になっても午前中のような太陽の光が注いでいます。

そしてその状態でいつのまにか日付をまたいで朝が来てしまうのです。

この映画が公開されたのは日本では今年の2月くらいなのですが、夏至というのはだいたい6月の20日あたりになるみたいです。

だから、ちょうど今の季節ということになります。

ポスターを見た時点で、なんか尋常じゃない異様さを放っていました。

白いレースに花飾りで西洋的な怖さというか・・・まぁ日本でもパナウェーブとかいう白装束のカルトがありましたけど、怪しい宗教系のサイコホラーなんだろうなと思いました。

とにかく導入部分の描写がひたすら怖くて、今にも何かヤバいシーンが出てくるのではないかとほんとにドキドキしたのですが、肝心?のグロシーンに突入した途端、ちょっとフェイクっぽい映画に見えてきました。

まぁ、あんまりリアルにやったら上映できませんからね。

この映画はホラー、スリラー、スプラッターに分類されるのでしょうが、ある意味凄く「現実」を意識させる映画だと思いました。

なんともいえない臨場感があり、異常な光景がさも目の前で繰り広げられているような感じなんです。

 

多次元宇宙(パラレルワールド)という論説があるじゃないですか。

宇宙の彼方にもうひとつ地球があって、もうひとりの自分が存在しているという説です。

私は映画館にいると、そのもうひとつの世界に来ているような気分になるのです。

映画館で映画を観ていると、映画の世界が実際に目の前で起きているような気分になります。

自分の感覚や感情が完全に映画の中の物になってしまうので、普段過ごしているリアルな世界、リアルな生活、自分の人生が逆に副次的な次元の世界に思えてしまうのです。

本来は映画の世界の方がフィクションであり副次的な存在のですが、映画館に居ると逆転します。

今回のミッドサマーを観ている時、その感覚を強く感じました。

自分がダニーになって草原の集落を体験しているような気分になります。

撮り方がさも現実に起こっているような、明晰夢を見ているような演出なのです。

劇中でも夢だったというシーンが何度かありますが、夢なのか現実なのかわからない怖いシーンが淡々と映し出されていきます。

通常、ホラーやスプラッターというと、日の当たらないダークな場所や湿っぽい雰囲気の場所を舞台にしていることが多いと思うのですが、こんな真昼の燦々とした太陽の下で繰り広げられる異様なストーリーというだけでも普通のホラーとは一線を画しています。

始終映し出される太陽の燦々とした光に狂気を感じます。

グロいシーンがやたらと話題になっていますが、グロいスプラッター要素を入れなくても充分怖かったのでは?と思います。

白い衣装を着た女の子達がスパイラルダンスをしたり、全裸の女性たちが並んで奇妙な歌を歌ったり、他にもエログロ要素がいっぱいあって一言で言うと薄気味悪い、気持ち悪い内容なんですけど、幽霊の怖さじゃなくて、人間の怖さをものすごく描いている作品といえます。

そういった面でも「現実」を意識させる映画といえます。

鬱の人が観るとキツい映画だという評判が出回っていますが、たしかに明るく美しい場所で展開する超エグい話という点でその通りかもしれませんね。

鬱の人はアッパーなものに弱くダウナーでダークなものを観ると安心するようなところがありますから、入り混じっている映画を観ると混乱する怖れがあります。

主人公ダニーの精神疾患による妄想のストーリーなのかな?とも捉えられます。

私も日光過敏症みたいなところが若干あり、白い色が反射しているのを見ると少しクラッとくるので視覚的に疲れました。

あの白い衣装がとても可愛く美しいと評判なだけにそのギャップに引きそうです。

とくに若い女性はああいうデザインがとっても好きな人が多いので、内容に対する評価がより複雑になると思いますし、観終わってからも女性としてはいつまでも気になり続けるところのある映画だと思います。

全体的に女性が強調されている映画なのです。

こんなカルト教団、実在しそうですが、それ以上にあのような宗教的な異常性をここまでリアルに体現した監督の凄さに圧倒されます。

 

音楽は、オープニングで流れるスウェーデン語で歌っている民謡のような歌が印象的で綺麗だと評判のようですが、個人的にすごく怖く聞こえました。

民謡とかって土着の歌って部外者が聴くと怖いところがありますよね。

言語も、普段聞き慣れてる言葉じゃないから何言ってるのかわからないし。

よく知られている日本の民謡にもそんな不気味な印象を与えるものがあるのかもしれません。

 

エンディングで流れるのは、アメリカのポピュラーシンガー、フランキー・ヴァリ(Frankie Valli)The Sun Ain’t Gonna Shine (Anymore)です。

 

 

太陽はもう輝かないという邦題になるのですが、うーん、意味深ですねぇ。

まるで映画の内容を示唆しているような・・・

 

観終わってからもなぜだかずーっと気になってしまう映画です。

もう一度観てみたいなぁと思うのですがその理由がわかりません。

ラスト、その後、もっと凄いことが起きたのかなぁとか考えてしまいます。

そんな、後を引きずる、青空の下で展開される前代未聞なホラーを観て損はないと思います。

 


 

 

ミッドサマー   MIDSOMMAR

2019年 アメリカ・スウェーデン 148分(劇場公開版) 171分(ディレクターズカット版)

監督 アリ・アスター

キャスト

フローレンス・ピュー(ダニー)、ジャック・レイナー(クリスチャン)、ウィル・ポールター(マーク)、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー(ジョシュ)、ヴィルヘルム・ブロムグレン(ペレ)、アーチー・マデクウィ(サイモン)、エローラ・トーチア(コニー)、イザベル・グリル(マヤ)、ビョルン・アンドレセン(ダン)

内容(あらすじ)

精神疾患を抱えた大学生のダニーは、同じく精神疾患だった妹が両親を道連れに自殺してしまったPTSDに苦しみ続け、恋人のクリスチャンはそれを重荷に感じながらも別れを切り出せずにいた。

翌年の夏、文化人類学を専攻するクリスチャンは友人マーク、ジョシュそしてスウェーデンからの留学生ペレと共に90年に一度しか開催されないという夏至祭の開かれるスウェーデンのホルガ村に行くことにするが仕方なくダニーも誘うことにする。

森に囲まれた草原、色とりどりの花、白い服を着て歌い踊る親切な住人達にダニーらは魅了されるのだが・・・