00年代カルト映画⑥ ハイ・フィデリティ High Fidelity

 

 

 

音楽映画にも色々ありますが、今回紹介するのは、世界初の中古盤屋を経営するアラサー男の物語『ハイ・フィデリティ』(High Fidelity)です。

2000年の映画で、1995年に出版されたニック・ホーンビーの小説が原作です。

原作はロンドンが舞台なのですが、映画はシカゴが舞台になっています。

ハイ・フィデリティの意味は、レコードプレーヤー・ステレオなどが原音を再生する際の高忠実度、ハイファイのことらしいです。高音質ってことかな。

ブロードウェイと日本でミュージカル化もされました。

 

“High Fidelity” est un film romantique écrit par un acteur  amateur de  musique.

 

“High Fidelity” is a romantic film written by a music lover actor.

 



 

作品について監督が「これは音楽映画であり音楽映画ではない。会話とキャラクターの映画だ。」と語っています。

まぁたしかに、舞台は中古盤屋ですけど、恋愛ロマンスストーリーであり、音楽そのものに焦点は当てられていないかなぁと思います。

 

とにかく主人公のロブがなんともグダグダとした中途半端な性格で、仕事にも満足せず、恋人ローラに対する嫉妬心もかなりのもので挙げ句に粘着質の根暗な行動に出たりとなんとも魅力のない人間に見えます。

過去の恋人たちを「別れのトップ5」にランク付けし、実際にその元カノたちを訪ねて自分のどこが悪かったのかなどを検証していきます。

このDVDの特典映像の中に未公開シーンがあり、「最低なことトップ5」や「夢の職業トップ5」などのシーンが入っているのですが、そういう、なんでもランキング付けをしたりする癖があるのはやはり音楽やレコードに異様に執着するマニアらしいと言えます。

そういったロブのマニアックな独自のこだわりが強調されながら話が進むところがカルト映画的かなと感じました。

 

しかし、音楽は60年代から現代も活躍するミュージシャンまで、中古盤屋らしい幅広くバランスの取れた選曲となっています。

あまり知られていないバンドもあれば、エルトン・ジョンやボブ・ディランなどの有名なソロの歌手の曲も登場します。

店で少年2人がレコードを万引きしたのですが、その商品内容が坂本龍一、ジグ・ジグ・スパトニック、ブレイクビーツ、セルジュ・ゲンズブールという滅茶苦茶なラインナップで、ロブが思わず「頼まれ物か?似合わないな」などと言うシーンもあります。

ロブが空想の中で相談する相手として、ブルース・スプリングスティーンがギターを弾きながらカメオ出演しています。

ブルース・スプリングスティーンってロック界のかなり大物なんですけど、日本ではなんとなく暑苦しい一発屋みたいなイメージが一時期ついちゃったみたいです。

 

店員役として「スクール・オブ・ロック」のジャック・ブラック(Jack Black)も出ていて非常にインパクトがあります。

そういえばスクール・オブ・ロックのポスター、頻繁に見かけたことあるなぁと思いますね。

もう一人の店員、ディック役のトッド・ルイーゾ(Todd Louiso)も地味男の存在感を出してかえって目立っています。

二人とも地味モサながらも個性的なオタクっぽい店員感を絶妙に出しています。

 

元カノの一人としてキャサリン・ゼタ=ジョーンズ(Catherine Zeta-Jones)が出演していますがさすがに美しくゴージャスで女性としては最も魅力のある演技をしています。

もちろんロブにはローラが一番似合っていますけどね。

ローラを演じているのはデンマークの女優、イーベン・ヤイレ(Iben Hjejle)です。

 

ロブを演じるジョン・キューザック(John Cusack)は、「マルコヴィッチの穴」、「セイ・エニシング」、「アドルフの画集」などの派手ではないが味のある作品を自ら選んで出演していることで有名で、この映画では製作・脚本・音楽監修を務めています。

だから彼のセンスが充溢している映画ともいえますね。

 

インタビューでも

「僕はロブのようなレコード収集家ではないが、脚本家の3人とも音楽で自伝をつづれる人間だ。」

と音楽が動力源となることを語っています。

 

「僕が16~17歳の頃好きだった曲は、25歳で一度パワーを失い、28歳で意味が変わってきた。」

「ぴったりはまる曲があると、痛みに高貴な重みが加わる。泥まみれになった時も、痛みを詩に昇華できれば苦しんだ甲斐がある。」

なるほど、音楽好きなら共感できる発言ですね。

 

「でもあるジャンルばかり聴いていると、“ディランの死の歌はうんざり、明るい曲を聴きたい”と思う。」

これもわかります。

音楽によって状況を救われたり逆に音楽から気分が転換されたりすることが伝わってきます。

 

監督も音楽の選択は基本的にジョンらに任せ、しかし最終的な決定は自らの裁量だと語っているので、全体に協力しあって進められたのだと思います。

 

ジョン・キューザックという俳優&映画プロデューサー&脚本家は、プライベートはほとんど明かされていないらしいのですが、2008年にストーカー被害に遭っているようです。

そのストーカーはその前にはトム・クルーズに付きまとっていたようです。

が、男性有名人の場合、交際相手などを公表せず私生活がミステリアスに見えたりする人が特にストーカーに狙われやすいような気がします。(個人の見解)

 

この『ハイ・フィデリティ』。

絶妙なチョイスのサントラには幅広いロックの曲が充実していますし、映画の中でも様々な曲が流れます。

 

60年代に成功を納めたアメリカのバンド

13thフロア・エレベーターズ(The 13th Floor Elevators)

“You’re Gonna Miss Me”

 

 

キンクス(The Kinks)

陽気にやろうぜ(Ev’rybody’s Gonna Be Happy)

 

 

80年代前半に活躍したニューウェイヴバンド、

バウ・ワウ・ワウ(Bow Wow Wow)

「アイ・ウォント・キャンディ」(I Want Candy)

は、2006年の映画「マリー・アントワネット」(Marie-Antoinette)でも使用されました。

 

この曲はロックンロールの生みの親、ボ・ティドリー(Bo Diddley)のテイストに似ていますね。

 

 

エルトン・ジョン(Elton John)

「クロコダイル・ロック」(Crocodile Rock)

ロケットマンでもタロン・エジャトンが歌ってました。

 

 

90年代のグラスゴー出身のバンド、

ベル・アンド・セバスチャン(Belle And Sebastian)

「シーモアスタイン」(Seymour stein)

85年にヒットしたイギリスの

カトリーナとザ・ウェーブズ(Katrina and the Waves)

「ウォーキング・オン・ サンシャイン」(Walking On Sunshine)

を、店の中でかけるのですが・・・

 

 

90年代から活動しているアメリカのソングライター、

リズ・フェア(Liz Phair)

「ベイビー・ガット・ゴーイング」(Baby Got Going)

 

 

ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)

「ザ・リバー」(The River)

は、グラミー賞 最優秀男性ロックボーカルパフォーマンスを受賞しました。

 

カメオ出演するのはこのシーン

 

 

英国のミュージシャン・音楽プロデューサー・DJ・ビジュアルアーティスト・俳優である、

ゴールディ(Goldie)ことクリフォード・ジョセフ・プライスMBE

“Hyena 1”

 

 

アメリカのシンガーソングライター・音楽プロデューサー、

バリー・ホワイト (Barry White)

「つのりゆく愛」( I’M GONNA LOVE YOU JUST A LITTLE MORE BABY)

 

 

60年代に全盛したアメリカのフォークロックバンド、

ラヴ(Love )

「オールウェイズ・シー・ユア・フェイス」(Always See Your Face)

 

 

こんなエレクトロニックな曲も。

ケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers )

「リーブ・ホーム」( Leave Home)

 

 

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)

「フー・ラブズ・ザ・サン」(Who Loves The Sun)

 

 

アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)

「ロック・ステディ」(Rock Steady)

 

 

北アイルランドのパンクロックバンド、

スティッフ・リトル・フィンガーズ(STIFF LITTLE FINGERS)

「サスペクト・ディヴァイス」(Suspect Device)

 

 

イギリスのザ・ベータ・バンド(The Beta Band)

「ドライ・ザ・レイン」(Dry the Rain)

 

 

そしていきなりお馴染みのクイーン(Queen)

「伝説のチャンピオン」(We Are the Champions)が登場したり。

 

 

ボブ・ディラン(Bob Dylan)

「今宵はきみと」(Tonight I’ll Be Staying Here with You)

 

「モスト・オブ・ザ・タイム」(Most of the time)

 

60~70年代のサイケデリックシーンで活躍したサンアントニオ出身のバンド、サー・ダグラス・クインテット(Sir Douglas Quintet )

「メンドシーノ」(Mendocino)

 

80年代から2000年代まで活躍し、2015年に活動再開したアメリカのオルタナティブバンド、

ロイアル・トラックス(Royal Trux)

「インサイド・ゲーム」(Inside Game)

 

アメリカのソウル/R&B歌手、

ジャッキー・ウィルソン(Jackie Wilson)

「アイ・ゲット・ザ・スウィーテスト・フィーリング」(I Get the Sweetest Feeling)

 

ラストに流れるのは

スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)

「アイ・ビリーヴ」(I Believe)です。

 

 

この映画、ジャック・ブラックがマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)を歌うシーンがすごく評価されています。

歌も上手いんですね~

 

 


 

 

ハイ・フィデリティ   HIGH FIDELITY

2000年 アメリカ 113分

監督 スティーヴン・フリアーズ

キャスト

ジョン・キューザック(ロブ・ゴードン)、イーベン・ヤイレ(ローラ)、ジャック・ブラック(バリー)、トッド・ルイーゾ(ディック)、リサ・ボネット(マリー)、ジョーン・キューザック(リズ)、リリー・テイラー(サラ)

内容(あらすじ)

シカゴで小さな中古レコード店を経営する30代独身のロブは音楽に対するこだわりがあまりにも強すぎる。そのため、店もパッとせず、同棲中の恋人ローラとも中途半端な状態だが、ある日、ローラが突然家を出ていってしまう。