00年代カルト映画⑤ 脳内ニューヨーク Synecdoche, New York

 

 

フィリップ・シーモア・ホフマン(Philip Seymour Hoffman)といえば、私が観てきた映画によく出ていた俳優だなあと改めて思います。

よく覚えているのがパイレーツ・ロック(The Boat That Rocked)で白い髭のDJを演じていたことです。

あと、トルーマン・カポーティ(Capote)も演じていました。

しかし、2014年に自宅でドラッグの注射針を腕に刺したまま亡くなってしまったのですね。重度のヘロイン中毒だったなんて知りませんでした。

そんな、カポーティでアカデミー主演男優賞を獲得するなど演技派であり、容姿も個性的なフィリップ・シーモア・ホフマンが、00年代を代表する脚本家のチャーリー・カウフマン(Charlie Kaufman)が監督を務めた唯一の作品で主演した不思議な造りの映画が、『脳内ニューヨーク』(Synecdoche, New York)です。

 

“Synecdoche, New York” est un film dans lequel vous ne pouvez pas voir ce qui est réel et ce qui est fictif, mais il représente la vie elle-même.

 

“Synecdoche, New York”is a movie in which you can’t see how much is real and what is fictional, but it represents life itself.

 



 

主人公の劇作家ケイデン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は地味に活動していましたが、ある日マッカーサー・フェロー賞受賞の知らせが届きます。

彼はその莫大な賞金を新作のリハーサルに投じるのですがその内容は、ニューヨーク市内にある巨大な倉庫内にもうひとつのニューヨークを造り、自分を含めた人々の生活を再現するというものでした。

リハーサルには多くの人々が駆り出されますが、謎の病に悩まされ始めたケイデンに様々な女性達が近づいては去って行ったり何人もの知人が死んでいったりと色んな事が続きリハーサルはなかなか終わりません。

そして本編は上演されないままだらだらと時間ばかりが流れていくのです。

 

ポスターやDVDのパッケージの印象からすると、じゃ~ん!と突然作り物のニューヨークが現れたりするようなかなりコミカルな内容なのかと思ったのですが、まるで違いました。

この映画のジャンルは「コメディ映画・ドラマ・ポストモダニスト映画・自主映画」となっているのですが、コメディにはあんまり見えないです。

作り物のニューヨークのシーンに入っていくところなどにわかりやすい場面展開などなく、境目がわからないままいつのまにか現実か妄想かわからない虚構の物語に突入しているという、全然コミカルでもなんでもない地味で難解な演出です。

ドニー・ダーコと同じく、何を言いたいのかがすぐ伝わってこないしあれこれ頭を使って考えても混乱してくるモヤモヤした難しさと、空虚な時間のダラダラ感を感じさせるのがやはりカルト映画に分類される理由なのかなと思います。

 

登場人物はすべてケイデンからセリフなどを指示され、歩き方などまでやり直しさせられたりするのですが、そういったやり取りが映画の中で自然に演じられるのでどこまでが現実でどこまでが劇中劇なのかわからなくなってきます。

それを映しているこの映画自体がなんなのか?みたいにもなってくるし。。。

ケイデン役もいるのですが自殺してしまったりなかなか安定しなくて掃除の女性を割り当てたりと配役の性別設定もめちゃくちゃ、娘オリーヴはタトゥーが原因で瀕死になってしまうなど次から次へと妄想だかホントだかわかんないエピソードが押し寄せてどんどん混乱します。

といってもそもそもこれ、映画なんだけど、、、

 

人生になぞらえるならば、特別にドラマチックなことが起きるでもなく、死への単調なリハーサルの繰り返しであるということを再認識させられます。

それを受け入れてこその人生なんですね。

 

音楽は通してアメリカのシンガーソングライター・音楽プロデューサーのジョン・ブライオン(Jon Brion)が担当しています。

主張はないけど綺麗なクラシックやジャズのような曲がさりげなく流れる感じです。

静かなBGMとしてとてもいいサントラだと思います。

 

 

 

 

 

それ以外に劇中ではstereo13の個性的な曲も流れます。

 

エンディングに流れる“Little Person”は、とても落ち着く女性ボーカルで、歌詞もなかなか印象的な名曲です。

歌っているのはディアナ・ストーリー(Deanna Storey)となっています。

が、肩書きが歌手ではなく脚本コーディネーターとなっているのは???

映画のスタッフの一員なのでしょうか?謎な存在ですねぇ。

 

 

そういうわけでこの映画は一筋縄では理解できないのですが、ラストシーンが作品の世界観をとっても上手く表現していると思います。

 

 



 

 

脳内ニューヨーク   SYNECDOCHE, NEW YORK

2008年 アメリカ 124分

監督 チャーリー・カウフマン

キャスト

フィリップ・シーモア・ホフマン(ケイデン・コタード)、サマンサ・モートン(ヘイゼル)、ミシェル・ウィリアムズ(クレア・キーン)、キャサリン・キーナー(アデル・ラック)、ロビン・ワイガート(オリーヴ)

内容(あらすじ)

ニューヨーク在住の劇作家兼演出家ケイデンは、特に大きな活躍をするわけでもなく地味に作品を上演していたが、ある日妻と娘に突然出て行かれてしまう。

そして彼の元に、本物の天才だけに与えられるというマッカーサー・フェロー賞の受賞知らせが舞い込んだ。

行き詰まっていたケイデンは、その莫大な賞金を使い、実際のニューヨークの中に自分の頭の中のニューヨークを再現するプロジェクトを構想する。