フランス映画の誕生②アンダルシアの犬 Un Chien Andalou

 

 

1920年代、サイレント映画時代の只中に、既成の概念を否定する「アヴァンギャルド」(前衛映画)がヨーロッパを中心として発生しました。

そのアヴァンギャルドの流派の中で最もスキャンダラスに異彩を放ったのが、ルイス・ブニュエルサルバドール・ダリによるショートフィルム『アンダルシアの犬』(Un Chien Andalou)です。

 

Un Chien Andalou” est un film d’avant-garde surréalisme produit par les espagnols Luis Buñuel et Salvador Dalí en France.

 

“An Andalusian Dog” is a surrealism avant-garde movie made in France by Spanish Luis Buñuel and Salvador Dalí.

 



 

ルイス・ブニュエルもサルバドール・ダリも共にスペイン人で、寄宿学校の先輩後輩の仲でしたが、この映画はフランスで製作されたのでフランス映画となります。

二人がクリスマス休暇にスペインにあるダリの家にこもり、自分たちの見た夢を題材にして、映画の一切の合理性を否定するイメージの連続のシナリオを書き上げ、それをベースにパリで撮影しました。

この20分弱程度のフィルムはYouTubeでも全部観れてしまいます。

犬は出てこないし舞台もアンダルシアではない・・・ところが映画全体の不条理性を象徴しています。

サイレント映画なので音楽や音がないところも、静かに観るのには最適です。

ぼんやり観ているうちになんとなーく終わってしまいます。

 

この映画で最大の有名シーンといえば女性の目をカミソリで切り裂くところでしょう。

映画を観たことがなくてもこのシーンだけは知っている人も多いと思います。

撮影法に色んな噂が飛び交ったようですが、死んだ仔牛の目を切り裂いていたという説が有力のようですね。

なんかぷにゅっとして、魚の目みたいにも見えるんですけど。

昔、このシーンを観てウッと顔を背ける当時の観客の女性をテレビで見たことがあります。

そういう共感性を引き起こさせるのもこの映画の狙いなのでしょうか?

それにしても全体が意味不明ですけどね。

ストーリーの大筋は男性と女性の恋愛のいざこざみたいな感じですが、不条理な作風が目立ち、無意識の世界を追求したシュールレアリスムの典型だなと思います。

ダリの絵と同じですね。

アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)は、1945年の『白い恐怖』(Spellbound)の悪夢のシーンを描く際にダリに美術を依頼し話題となったそうです。

これにも目と眼球が強調された演出がありました。

目フェチなんですかね?

 

 

ダリは変人ぶっていた所もあったようですがやはり奇想天外なことを次々に考えることができたようです。

そういえば昔『ダリ 天才日記』(Dali)という映画をVHSで観たことがあったのですがダリの気性の激しさが非常に伝わってきてユニークで面白かったなぁ。

ダリってショーウィンドウのディスプレイみたいな仕事もしてたんですね。

 

 

ブニュエルは1929年にこのアンダルシアの犬でデビューしたあと、続々と歴史に残る名作を撮っていき、1967年にはフランスのトップ女優カトリーヌ・ドヌーヴ主演の『昼顔』(Belle de jour)でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞しています。

 

 

あと、1972年の映画『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(Le Charme discret de la bourgeoisie)もブニュエルの監督です。

この映画、夢オチっぽいコメディなんですけど、夢と現実の間をさまよっている作風のブニュエルらしい作品と言っていいかも知れません。

 

 

 

1962年のフランス映画『ラ・ジュテ』(La Jetée)は、個人的になんとなくアンダルシアの犬と被って見えるところがあります。

 

 

SF映画なのでシュールレアリスムとはちょっと違うんですけど、静かなモノクロ画面の中で少し不条理な感じの描かれ方をしている短編映画なのでそう見えます。

 

 

ブニュエルは非常にしっかりとした映画技術の持ち主であり、アンダルシアの犬は一見論理性のない映像の連続に見えるけれど現代の映画の飛躍した演出に通じるところがあり、そのようなマルチで先駆的な知性がダリの自由奔放さとマッチしてバランスよく仕上がったようです。

スペイン人の作った映画がフランス映画となっているところから、当時からすでに当たり前であったフランスの多民族性がうかがえます。

フランスの前衛映画の始祖として欠かすことのできない映画です。

 


 

 

アンダルシアの犬   UN CHIEN ANDALOU

1928年 フランス 17分

監督 ルイス・ブニュエル

キャスト

ピエール・パチェフ(男)、シモーヌ・マルイユ(若い女)、サルバドール・ダリ、ルイス・ブニュエル